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猫じゃらしは、すぐ壊れるのが当たり前?

「ネコ目線のモノづくり」でネコをもっと幸せに!nekozukiプロダクトデザイナーの太野(ふとの)です。今日はnekozukiの商品開発についてお話します。
室内で暮らすネコさんの運動不足やストレス解消、飼い主とのコミュニケーションの道具として、「おもちゃ」は欠かせません。
猫のおもちゃといえば、「猫じゃらし」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。楽しそうな猫じゃらしを見つけるたびに、「ちゃっくんやぽんちゃんへのお土産にしよう!」「反応が楽しみ」「喜んでくれるかな?」とワクワクしながら買っては試す…を繰り返していました。
ネコさんは狩りの名手です。特にぽんちゃんは狩りが上手で、すぐに猫じゃらし(獲物)をくわえて離しません。まるで綱引きのように引っ張り合った末、噛みちぎられてしまうことも…。遊んでくれるのは嬉しいけれど、結局すぐに壊れてしまい、使い捨てになりがちで、「壊れていない部分はまだ使えそうだけど、ネコさんにとって危なそうだから捨てるしかない。もったいないな…」と感じていました。
わたしと同じように「すぐ壊れる」「飽きる」「安全性が不安」といった悩みを抱えている方の声を受け、「長く使えて、安全で、猫がずっと楽しめる猫じゃらしを作りたい!」という思いから、開発をはじめました。
「たのしんぼう+」が生まれたきっかけ
初代『たのしんぼう』の課題
2025年2月22日に販売を開始した『たのしんぼう+』は、2015年後半から2016年にかけて、約半年間販売していた『たのしんぼう』 の改良版です。

初代「たのしんぼう」には、いくつかの改善すべき点がありました。
- 紐が外れやすく、安全面に不安を感じる声が寄せられた
- 「もっと耐久性を向上できないか?」という声も寄せられた
実際にお寄せいただいたお客さまの声

猫ちゃんも私もお気に入りでしたが、猫が紐(ゴム)をかじかじするので、だんだん結び目だらけで短くなり、先日、私の不注意で棒が折れてしまいました。ガムテープをぐるぐる巻きにして使っています。リピートを検討中です。

竿の先端のゴム紐留めの丸い布がすぐに脱落するのがちょっと残念。(結局、丸い布は付けるのをやめてしまいました)でもデザインはスタイリッシュでおしゃれ
安全面での問題が見つかり、これはいけないと思い、すぐに販売を中止しました。その後、わたしの至らなさで初代『たのしんぼう』には申し訳ないことをしたと思い、処分できずに長い間、倉庫に眠っていましたが、昨年(2024年)、倉庫を片付けていたとき、久しぶりに『たのしんぼう』と再会しました。その瞬間、あるアイデアがふと浮かんだのです。

「日傘のカバーみたいに、安全カバーを付けて遊んだらいいのでは?」
早速、ネコ社員(うちのネコさんたち)に意見を聞いてみることにしました。
試作と職人さんとのやりとり
猫じゃらしを作るにあたり、どんな材料を使うべきか、試行錯誤していました。そんなとき、木工職人さんと話している中で、剣道場で廃棄される竹刀の話が出たのです。

「竹刀って、結構いい素材なんですよ。
その一言を聞いた瞬間、「もしかして…?」とひらめきました。

これ、猫じゃらしの竿にぴったりなんじゃないか?
気になって、すぐに職人さんに詳しく聞いてみました。

竹刀は、中が空洞だから軽いんですけど、意外と丈夫なんですよ。強度があるし、繊維が縦に並んでいるから折れにくいんです。
なるほど。だから剣道の打ち合いでも簡単には折れないのかと納得しました。

しかも、中が空洞だから適度にしなるんですよ。そのおかげで、衝撃もうまく吸収するんです。
話を聞けば聞くほど、猫じゃらしにぴったりの素材に思えてきました。
ネコの狩猟本能を刺激する、しなやかな動きを生み出せる!
軽いから、飼い主さんが遊んでも疲れにくい!
丈夫で長持ちする!
さらに、岩手県内の剣道場で廃棄される竹刀を再利用すれば、環境にも優しい。一石二鳥です。こうして、猫じゃらしの竿の素材は決まりました。ですが、新たな課題が生まれました。
「持ち手部分をどうやってしっかり固定するか?」
ネコさんたちは遊びに夢中になると、ものすごい力で引っ張ります。簡単に外れてしまっては意味がありません。どうにかして頑丈に取り付けたい。でも、釘やネジを使うと、錆びによる劣化が心配です。耐久性を考えると、できるだけ避けたいところでした。
そこで、職人さんに相談すると、思いがけない答えが返ってきました。
「釘もネジも使わずに、しっかり固定できる方法がありますよ。」
「えっ?そんなことができるんですか?」と驚くと、職人さんは木片を手に取りながら説明してくれました。

「込み栓(こみせん)という、日本の伝統技法を使えば、木の力だけでしっかり固定できます。しかも、使うほどに締まりが強くなり、どんどん頑丈になるんですよ。」
まるで、生きている木の力を活かした技法だと感じました。
「それなら、ネコさんがどれだけ激しく遊んでも安心ですね!」

さらに、持ち手部分にも工夫を加えました。木材加工の際に発生する端材を集め、集成材として生まれ変わらせたのです。これにより、環境への負担を減らすだけでなく、木の滑らかな肌触りが心地よく、握りやすい形に仕上がりました。長時間遊んでも疲れにくいのも、大きなメリットです。
竹刀を再利用した竿に、日本の伝統技法を活かした持ち手、そして環境にも配慮した素材選び。
『たのしんぼう』に最適な素材と技術が揃った! そう確信し、ワクワクしながら試作を進めることにしました。
最も時間がかかった「安全な紐選び」
「たのしんぼう+」の開発の中で、最も時間がかかったのが 紐選び でした。

ネコさんが夢中で遊んでも 噛み切りにくく、絡まりにくく、爪が引っかかりにくい —— そんな理想的な紐を探すために、何度も試作を重ねました。
最初は「市販の紐の中に、ちょうどいいものがあるのでは?」と考え、あらゆる素材や太さの紐を集めて、ネコ社員たちに試してもらいました。しかし、実際に使ってみると どの紐も一長一短 で、「これだ!」と思えるものがなかなか見つかりません。
例えば、噛み切りにくさを優先して、登山用やアウトドア向けの 芯入りの強度が高い紐 を試してみました。確かに耐久性は抜群でしたが、万が一ネコさんに当たったときに硬くて痛そう……。
「それなら絡まりにくい紐を選ぼう!」と、釣り竿のリールのような細い糸も検討しましたが、絡まったときに足に巻きつく危険があるため断念。安全性を優先して太い紐を試してみると、今度は 動きが鈍くなり、狩猟本能をくすぐる動きが出せない という問題が発生。飼い主さんが操作しづらく、結果的にネコさんのテンションも下がってしまいました。
「安全性」「耐久性」「遊びやすさ」……何を最優先にするべきかを見極めるため、30種類以上の紐を試し、改良を繰り返しました。
老舗の紐メーカーと試行錯誤
「もしかすると、私が知らないだけで 猫じゃらしにぴったりな紐 があるのかも?」
そう考え、日本国内の 老舗の紐メーカー を訪ねることにしました。
試作品とぬいぐるみネコ社員を手に、メーカーの職人さんに相談すると、最初は「猫じゃらし用の紐ですか?」と驚かれつつも、「面白いですね!」と興味を持ってもらえました。何度も打ち合わせを重ね、試作を繰り返しながら、最終的に 3種類の候補 を選定しました。

その後、ネコ社員たちのテスト開始!
私たちがチェックしたのは、こんなポイントです。
- ネコが楽しく遊べるか?
- 耐久性は十分か?
- 安全に配慮されているか?
- 絡まりにくいか?
- そして、「飽きずに遊び続けられるか?」
何度も試行錯誤を繰り返し、ついに 「爪が引っかかりにくく、竿のしなりを活かせる、狩猟本能を刺激する理想の紐」 にたどり着きました。時間はかかりましたが、ネコさんが より安全に、より楽しく遊べる猫じゃらしに一歩近づきました。
ネコ社員のテストで完成度を高める
材料が揃い、試作品を作成。さっそくネコ社員たちに試してもらうことにしました。
中でも、一番の働き者(?)は あんこちゃん。
最初に試したときから、目を輝かせて飛びつき、全力で遊んでくれました。

何度もテストを繰り返すうちに、私自身も猫じゃらしの動かし方がうまくなってきたのか、楽しそうに遊ぶ姿を見ることが増えてきました。試作品の改良を進めながら、猫じゃらしは「どう作るか」だけでなく、「どう動かすか」も大事なんだな と実感する日々でした。
また、獲物の形や厚さについても試行錯誤を重ねました。
いくつかのデザインを作り、それぞれの反応を観察。夢中になって追いかけたり、思ったより反応が鈍かったり……。そうした試行錯誤の末、最終的に 「これなら絶対に食いつく!」 という形が決まりました。
ネコ社員たちが心から楽しんで遊ぶ姿を見て、ようやく「これなら大丈夫」と確信。
そして、せっかくなら猫にとって特別な日に発売しよう! ということで、2025年2月22日「猫の日」 に「たのしんぼう+」は誕生しました。

たのしんぼう+
交換可能パーツで「楽しさ」、専用カバーで「安全性」をプラス。
ネコさんのための長持ち設計、壊れにくい猫じゃらし詳細はこちら