開発のきっかけは愛猫「ぽんちゃん」 

猫社員ぽんちゃん
ぽんちゃん

ネコ社員でもあった飼い猫「ぽんちゃん」。
ぽんちゃんは、内股の走り姿がとってもかわいいこで、毎朝、飼い主(わたし)をかわいい猫手で起こしてくれました。新聞を読んでいると必ずやってきてゴロゴロ、飼い主がストレッチをしていると一緒にゴロゴロとそばにいるのが当たり前の存在でした。「最近、なんだか元気がないな」と、動物病院に連れて行くと、腎不全がかなり進んでいました。なんでもっと早く気づかなかったんだと自分を責めました。

腎不全闘病中の猫社員ぽんちゃん
闘病中のぽんちゃん

ぽんちゃんの辛さを少しでも取り除きたいと考え、自宅での定期的な皮下点滴を望みました。 先生のお手本をみるととてもカンタンに見えましたが、いざ自分がやってみると思うようにいきません。なかでも保定が難しかったです。市販の保定袋をいろいろ購入し試してみるも二人で使用することが前提なのかうまくいきません。嫌がるぽんちゃんを無理やり袋にいれようとしていることにも罪悪感を覚えるようになっていきました。 

その後、ぽんちゃんは入院中に旅立ちました。早朝に先生から連絡をいただいたとき悲しみで涙がとまりませんでした。ぽんちゃんの最期に立ち会えなかったこと、一匹で寂しい思いをさせてしまったのではないかという後悔が今でも心残りです。 

「ぽんちゃん」のため、同じ悩みを抱える飼い主さんのため 

猫社員ちゃっくん
ちゃっくん

ぽんちゃんが保定袋を必要としているときには間に合いませんでしたが、わたしと同じようにネコの皮下点滴でお困りの方がいるのではないか。そんな思いから保定袋の開発を決意しました。

 商品開発のテーマはわたしがぽんちゃんにしてあげられなかった「ネコが嫌がらずに飼い主一人でも保定できること」 

開発に協力してくれたのは、ぽんちゃんときょうだいのネコ社員「ちゃっくん」です。 

試作品を作っては、ちゃっくんと使用感を確認していく日々がはじまりました。 

開発は失敗の連続、試行錯誤の6年、試作品は100以上 

開発は試行錯誤と失敗の連続でした。従来の保定袋はネコの体にジャストサイズで袋にいれるとき大変だったので、思い切って大きな袋状の入れ物を作り、ちゃっくんをいれようと試みましたが後ろ足で嫌々キックをされイメージ通りに行きません。 

前足と後ろ足をお腹の下にしまい込んだ香箱座りする様子からヒントをもらい、ベッドのように囲まれた空間内に、風呂敷のように広げた生地を置き、ネコが座ったら持ち上げるタイプを試しましたが、ちゃっくんの怯えた表情がダメと言っていました。 

ちゃっくんの動きを観察するため、思いついたものを片っ端からミシンで簡易的に作成し、ちゃっくんの反応を見ながらカタチをつめていきました。 

ねこずきのおくるみの商品開発の様子
ちゃっくんと商品開発

気づけば6年が経過し、試作品の数は100を超えていました。ネコの皮下点滴において前足を出す必要はまったくありませんが、ある日、間違えてそういった試作品を作ってしまいました。せっかくだから試しに使ってみたところ、なぜか嫌がりません。ちゃっくんだけの特殊な反応なのかな?と思い、動物いのちの会いわてのネコさんたちにも協力いただき複数ネコの確認したところ同様の反応を確認することが出来ました。 

驚くことにどのネコも装着時、嫌がらずリラックス。 

失敗品からネコは前足が地面に着いていると落ち着く習性に気づくことができました。

この習性に気づいてから開発は劇的にスピードアップしました。

ネコをおさえる手の変わりの腹巻きを追加し、どのような形状にすると一人でも手早く保定できるようになるか、ちゃっくんと試行錯誤を重ねました。

完成まであと少しというところで、ちゃっくんが天国に旅立ちました。
その後は後輩ネコ社員の「あんこちゃん」「きなこちゃん」「ひいらぎちゃん」が引き継ぎました。

ちゃっくんと後を引き継いだ猫社員あんこちゃん、きなこちゃん、ひいらぎちゃん

縫製職人にも100を超える試作品作りをしていただきました。途中、Zoomオンラインでネコテストの動画を共有しながら、ときに「あんこちゃん」も会議に参加しながら修正を繰り返しました。

多くのネコの協力により完成 

完成までには多くのネコさんたちの協力がありました。動物いのちの会いわての「ミッシェルちゃん」「ゴムちゃん」「りょうゆうくん」「ルルちゃん」「こーよーくん」「ドリーちゃん」体格の違うネコさんのおかげで複数のサイズ展開が可能になりました。

動物いのちの会いわて の猫が開発に協力

「ねこずきのおくるみ」は前足が地面についていると落ち着くネコの習性を活用しているから飼い主一人でも楽に保定できる商品として完成し、2024年8月8日(世界ネコの日)に販売を開始しました。

お客さまの声が励みに 

発売後、購入者の方からたくさんの感想をいただきました。

補液の点滴を始めるにあたり、1人でしなければならずとても不安でしたが、“ねこずき”さんの「おくるみ」大変助かりました。抵抗なく着せられましたし、じっとおとなしくなるので、補液がスムーズにできました。ありがとうございました。  

(アツコさま 福岡県在住)

 輸液や投薬や爪切りなど、上手くいかなかったり通院が必要だったりで猫さん達も私自身も負担に感じていた事が幾らか解消されると思うので、本当に有難い商品だと思います 

(kaokao30さん)

これらの感想を拝見し、開発途中、ネコの習性がつかめない時期があり、あきらめかけたことが何度もありましたが粘って完成することが出来、本当に作ってよかったと思いました。

グッドデザイン賞とこれから

「ねこずきのおくるみ」は2024年にグッドデザイン賞を受賞することができました。

猫の保定袋 2024年度グッドデザイン賞を受賞

グッドデザイン賞受賞ページ

審査委員からは「ペットの医療用品において、互いの負担をなくすことは非常に重要である。本製品の設計や形態は実体験に基づき、人間と猫の双方の課題を的確に認識し、猫を保定する既存の方法や商品を適切に分析した上で、負担を軽減する手法を徹底的に考慮している。素材は洗いやすく、手入れも簡単である。猫にとっても負担が少なく、それぞれのニーズに寄り添ったバランスの取れたデザインとなっている。」といった評価をいただきました。 

「ねこずきのおくるみ」は完成しましたがnekozukiの製品は常に改良を重ねています。同じく闘病中のネコが使う「フェザーカラー」は2011年の発売開始からこれまで40回近い改良を行い、今も進化を続けています。そういった意味では完成はないのかもしれません。

最後に「ぽんちゃん」と「ちゃっくん」への感謝をこめて 

nekozukiの猫社員

この記事を書きながら、ぽんちゃん、ちゃっくんと過ごした日々を思い出し感謝の気持ちでいっぱいです。nekozukiの商品は飼い猫でもあるネコ社員との暮らしの中からさまざまな学びを得、それをカタチにしながらモノづくりをおこなっています。そういったいみではネコ社員が作っています。「ねこずきのおくるみ」はネコ社員の協力により生まれました。

ネコさんと一緒に開発した「ねこずきのおくるみ」でネコさんの自宅での皮下点滴が身近なものとなり、ネコと飼い主さんの闘病生活を少しでも快適なものとなるようサポートし、ふれあいの時間を増えることを願っています。

ねこずきのおくるみ

「入れる」保定袋から「着せる」保定服へ。ネコのストレスを軽減し、飼い主さん一人でも保定できる、特許技術のネコ用保定袋。
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