飼い主に抱っこされている猫

ネコさんに多い病気として知られる慢性腎臓病(CKD)。先日、ネコさんのCKDについて詳しく講義をしてくださった獣医師の佐藤れえ子先生のお話から、「実はCKDは、ヒトも注意したい病気である」ということがわかりました。

そこで本記事では、ネコさんとヒトに共通するCKDのリスクや進行メカニズムに着目し、飼い主さんにも注意してほしいポイントについてまとめました。

ネコさんと暮らす飼い主さんに、ぜひ読んでいただきたい内容です。

獣医師 佐藤れえ子先生

監修者:佐藤 れえ子 先生
岩手大学名誉教授
日本獣医腎泌尿器学会 顧問

こんな人におすすめ
  • CKDへの理解を深めたい人
  • ヒトとネコのCKDの共通点について知りたい人
  • ネコさんと一緒に健康的な暮らしを意識したい人
  • じつは健康診断でeGFRや尿検査の数値が気になっていた人

▼ネコの慢性腎臓病について知りたい!関連記事はこちら

腎臓病はネコだけじゃない!飼い主にも潜むCKDのリスク

「慢性腎臓病(CKD)」は、ネコさんだけでなく、私たち人間にとっても非常に身近な病気です。

そもそも「CKD(Chronic Kidney Disease)」という呼び方は、ヒトの医療分野で深刻な社会課題として取り上げられるなかで生まれた言葉です。

やがてこの考え方が獣医学にも取り入れられ、「ネコのCKD診療」という形で動物医療にも広がってきたという背景があります。

成人の8人に1人がCKD。「治療費」がひとつの課題

日本では、成人のおよそ8人に1人、約1,330万人がCKDに該当するとされており、まさに“国民病”といえます。

そしてヒトのCKDは、末期まで進行すると人工透析が必要になります。透析患者は2023年末の時点で約34万人を超えており、その医療費は年間で1.6兆円以上にものぼります。

引用:日本透析医学会「2023年日本透析医学会統計調査報告書

CKDにかかる治療費の例を見てみましょう。

たとえば、以下は「血液透析を週3回、仕事帰り(夜)に受けている場合」の治療費について示したものです。

項目点数診療報酬
再診料72点720円
人工腎臓(4時間以上5時間未満の場合)2,175点21,750円
夜間休日加算(夕方5時以降の施行で算定化)300点3,000円
透析水質加算220点200円
ダイアライザーほか(透析1回あたり)4,000円
慢性維持透析患者外来医学管理料2,250点22,500円
CKDの治療と透析の費用例

上記の例では、透析1回あたり29,670円の治療費がかかる計算です(※健康保険などをのぞく)。

週3回の治療を行った場合、1ヶ月あたりの合計は356,040円※です。(※月12回で算出)

透析には1人あたり年間約400〜500万円の医療費がかかるとされ、これは社会にとっても個人にとっても大きな負担となります。

透析患者は、生涯この治療を受け続けなければなりません。年間500万円近い医療費がかかると聞くと驚くかもしれませんが、実際の自己負担額は高額療養費制度のおかげで、3割負担の場合で約120~150万円です。

とくに高額療養費制度は「適切な医療を受けなければ生きられない」人たちにとって、非常にありがたい制度となっています。

CKD罹患率はネコもヒトも高齢になるほど上昇

とくに高齢ネコの発症率は高く、15歳以上では約80%がCKDを抱えているとも言われています。全体でも約30〜35%のネコさんにCKDが認められており、「高齢ネコの代表的な病気」と言っても過言ではありません。

そして、ヒトのCKDも加齢とともにリスクが高まる点では同様です。

統計からも年齢が上がるにつれて罹患率が上昇することが明らかになっており、ヒトとネコさんで共通する特徴といえるでしょう。

【参考】

引用:一般社団法人 日本腎臓学会「CKD診療ガイド2012」コラム3 年齢別のCKD患者の頻度 より

とくにヒトのCKDでは、年齢とともにリスクが高まり、年金生活が始まる時期から罹患率が急上昇します。この時期は収入も限られがちなため、治療費の継続的な負担が現実的な課題となることもあるでしょう。

このように、ヒトとネコさんどちらにとっても身近なCKDだからこそ、日常生活のなかで「腎臓にやさしい暮らし方」を意識することが、健康寿命を延ばす第一歩になるのです。

ヒトとネコの腎臓病における共通点と相違点

猫と腎臓病

慢性腎臓病(CKD)は、ヒトにもネコさんにも見られる病気であり、多くの共通点が挙げられます。一方で、身体構造や医療環境の違いなどにより、治療方針や管理方法には相違点も存在します。

ここでは、ヒトとネコさんにおけるCKDの共通点と相違点を整理しながら、それぞれの特徴を理解していきましょう。

ヒトとネコのCKDにおける共通点

1.CKDの定義は共通
「CKD」とは、“原因の如何を問わず、3ヶ月以上の長期間にわたって腎障害が持続している状態”を指す用語です。
この定義はヒトとネコさんで共通しており、治療の目的が「腎臓病の進行を遅らせること」という点も同じ考え方になっています。

2.ステージ分類(ステージング)の考え方が共通
ヒトでもネコさんでも、CKDの進行度に応じて「ステージ(病期)」を分けて管理するという基本的な枠組みは共通しています。

3.腎臓の基本的な構造とはたらき
ヒトもネコさんも、腎臓の構造は共通しており、ネフロン(糸球体と尿細管)という単位がろ過・再吸収・分泌といった働きを担っています。
そのため、機能障害が起きたときの体への影響や症状の出方にも類似点が見られます。

4.加齢とともにリスクが上昇
ヒトもネコさんも、年齢を重ねるほどCKDのリスクが高まります。これは、腎臓の働きを担う「ネフロン」という構造が、加齢とともに少しずつ壊れたり減ったりしていくためです。

5.初期にはほとんど症状が出ない
腎臓が「沈黙の臓器」と呼ばれるのは、ヒトもネコさんも同じです。自覚症状が出にくいため、早期発見が難しいという共通の課題があります。
症状が見られたときにはすでに病気が進行しているケースが多く、定期的な検査が不可欠です。

ヒトとネコのCKDにおける相違点

ヒトとネコさんのCKDには共通点が多い一方で、腎臓の構造や治療体制の違いにより、以下のような違いもあります。

1.ネフロン数の違い
ネコの腎臓はヒトに比べて非常に小さく、ネフロンの数もヒト(1腎あたり約100万個)に比べてずっと少ないため、一つひとつのネフロンの負担が大きいのが特徴です。

参考:動物のネフロン数
  • ヒト:1腎あたり約100万個
  • イヌ:1腎あたり約40~60万個
  • ネコ:1腎あたり約20万個
  • ゾウ:1腎あたり約700万個

ネフロン数が少ないぶん、ネコさんのほうが腎臓へのダメージを受けやすく、CKDの進行も早くなる傾向があります。

2.治療法の違い
ヒトのCKD治療では、人工透析や腎移植が選択肢として存在します。健康保険や高額療養費などの社会制度に支えられながら、継続治療を行うことができます。
一方、ネコさんでは皮下点滴や食事療法、投薬などで進行を遅らせる治療が主流です。

3.ステージ分類と評価指標の違い
ヒトではCKDのステージ分類に1〜5の5段階が用いられ「eGFR(推算糸球体ろ過量)」という指標を中心に評価されます。

eGFRは年齢・性別・血清クレアチニン値などから算出される数式が確立されており、腎機能のスクリーニングや経過観察に広く用いられています。


【ヒトのCKDステージ分類】

ステージ重症度GFR
ハイリスク群≧90
1GFRは正常あるいは亢進≧90
2GFRは軽度低下60~89
3GFRは中等度低下30~59
4GFRは高度低下15~29
5腎不全<15
参考:一般社団法人 日本腎臓学会「CKD診療ガイド」

一方、ネコさんでは、国際獣医腎臓学会(IRIS)の基準に基づき、ステージ1〜4の4段階で評価されます。

【ネコのCKDステージ分類】

ステージ血漿Cre濃度(mg/dL)SDMA(μg/dL)
1<1.6<18
21.6~2.818~25
32.9~5.026~38
4>5.0>38
参考:IRISのネコのCKDのステージング(IDEXX Japanのホームページ) 


ネコさんでは、ヒトで使われているeGFRのような推算式はまだ一般的には確立されておらず、現状では血清クレアチニン値とSDMA(対称性ジメチルアルギニン)を中心に分類を行っています。

editer_logo

ヒトのCKDの評価指標に用いられている「eGFR(推算糸球体ろ過量)」について、詳しくは次の見出しで解説しています。

腎臓は「沈黙の臓器」。気づかないうちに進行する怖さ

腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるように、病気が進行しても初期には自覚症状が出にくい臓器です。ヒトもネコさんも、気づいたときにはすでに病気が進んでいた……ということが少なくありません。

だからこそ、腎臓の健康状態を客観的に把握し、早期に異変に気づくことがとても大切です。

ここでは、腎臓の構造と役割、そして健康診断でチェックできる指標について解説していきます。

腎臓のろ過を担う「ネフロン」とは?

腎臓のおもな役割は、血液をろ過して老廃物を尿として体外に排出することです。このろ過を担う最小単位が「ネフロン」です。

ヒトの腎臓には1つあたり約100万個のネフロンが存在し、それぞれが糸球体と尿細管で構成されています。糸球体で血液をろ過し、尿細管で必要な物質を再吸収・分泌し、調整。この仕組みによって、体内の水分や電解質、老廃物のバランスが保たれています。

腎臓は体全体の血液のうち20%以上が流れ込むほど血流が豊富な臓器です。その約90%が腎皮質(ネフロンのおもな存在部位)に集中する一方、腎の深部である髄質は血流が少なく、酸素供給が乏しいという特徴があります。

そのため、髄質にあるネフロンは酸素不足などのダメージに非常に弱く、いったん壊れてしまうと再生が難しいのが実情です。これが腎臓が「沈黙の臓器」と呼ばれる理由の一つであり、症状が出たときにはすでに多くのネフロンが機能を失っていることもあります。

ネフロンの働きを数値化する「eGFR」とは?

ネフロンのろ過機能がどれだけ保たれているかを推測する指標として、ヒトの健康診断で使われているのが「eGFR(推算糸球体ろ過量)」です。

これは、腎臓が1分間にどのくらいの血液をろ過できるかを示す数値で、正常値は90mL/min/1.73㎡以上とされています(1.73㎡は体表面積で補正した基準値)。

eGFRは、血清クレアチニン値・年齢・性別をもとに算出されます。ただし、年齢とともに自然と低下する傾向があるため、単にeGFRの数値が下がっているからといってすぐに異常と断定することはできません。

たとえば、同じクレアチニン値(0.8mg/dL)でも、20歳男性ではeGFRが90以上あるのに対し、70歳男性では約73まで下がります。これは加齢による自然な変化である場合もありますが、年齢相応の低下か病的な進行かを見極めるためには、他の検査項目や経過の確認が必要です。

【eGFR(推算糸球体ろ過量)早見表】

引用:日本腎臓学会「CKD診療ガイド2012」eGFR男女・年齢早見表 より

ヒトのeGFRを算出するには、本来は「24時間蓄尿」といった少々手間のかかる調査が必要でした。しかし、国民の健康診断結果のような膨大なデータを統計処理した結果、上記の早見表が作成できたのです。

この早見表では、CKDのステージごとに色分けされており、健康診断の数値と照らし合わせることで、現在の腎機能の状態やリスクが一目でわかるようになっています。

CKDが進行するとどうなる?

ヒトのCKDは、その進行度に応じてステージ1〜5に分類されます。ステージ5に至ると、透析療法や腎移植が必要になることもあります。

進行度を評価する際には、eGFRだけでなく、「アルブミン尿」や「タンパク尿」の有無も重要な指標です。たとえeGFRが正常範囲にあっても、尿に異常があればリスクが高いとされます。

これらのデータを組み合わせて分類した「リスクマップ」では、色の段階によって危険度が示されており、緑は正常、黄色・赤に近づくほど重度の腎機能低下を示します

引用:一般社団法人 日本腎臓学会「CKD診療ガイド2012」表2 CKDの重症度分類」より

このように、健康診断で得られる情報を活用することで、CKDの兆候を早期にキャッチし、生活習慣の改善や医療機関での対応へとつなげることができます。

腎臓病が進行すると起こる合併症とは?

慢性腎臓病(CKD)が進むと、単に腎機能が低下するだけでなく、体のあちこちにさまざまな悪影響を及ぼします。とくに末期に近づくにつれ、命に関わる深刻な合併症が現れることもあり、注意が必要です。

ここでは、そのなかでも代表的な「尿毒症」と「骨ミネラル代謝異常」について解説します。

命に関わる危険な合併症「尿毒症」

CKDが末期まで進行すると、腎臓が老廃物を排出できなくなり、「尿毒症(Uremia)」と呼ばれる深刻な状態に陥ることがあります。これはヒトにもネコさんにも共通する合併症で、命に関わる重大な症状を引き起こします。

1.尿毒症の定義

尿毒症とは:
血液中に過剰に尿素と他の窒素性廃棄物が存在すること。透析で軽減できる重症の持続性腎不全による症候群。(ステッドマン医学大辞典より)

語源は「Urine in the blood」、つまり「血液の中に尿がある」という状態です。

2.原因物質(尿毒素)の分類

尿毒素は、分子量によって3つに分類されています。

分子量主な物質例備考
小分子(300以下)尿素、尿酸、クレアチニンなど最も基本的な老廃物
中分子(300~12,000)β2-ミクログロブリン・PTH(副甲状腺ホルモン)・ポリアミン類 など赤血球生成抑制など
高分子(12,000以上)ミオグロビンなど比較的大型の毒素

【参考】

これらの毒素が体内に蓄積されることで、多臓器に影響を及ぼすことになります。

3.尿毒症のおもな症状

ヒトにおいては、尿毒症が進行すると以下のような重篤な症状が見られます。

【尿毒症のおもな症状】

【尿毒素物質が与える影響①】

【尿毒素物質が与える影響②】

これらは一部、ネコさんにも共通しており、ネコでは消化器症状や腎性貧血などが見られることがあります。

ネコの代表的な尿毒症の症状
  • 食欲不振、嘔吐
  • 口臭(アンモニア臭)
  • ぐったりする、無気力
  • けいれん、体温低下
  • 意識の混濁

※ここで紹介している尿毒素の分類は代表的なものです。現在ではさらに多くの物質が尿毒素として認定されていますが、大枠を理解するうえでの目安としてご覧ください。

4.治療・対症療法

ヒトの場合、尿毒症のおもな治療は透析療法です。腹膜透析や血液透析によって体内から毒素を排出し、生命を維持します。

ヒトの場合
  • 血液透析/腹膜透析
  • 貧血や高血圧に対する薬物治療
  • 食事療法(タンパク・塩分制限など)
ネコの場合
  • 皮下補液(点滴)
  • 療法食(低リン・高カロリー食)
  • 嘔吐止めや胃薬などの内服
  • 病院によっては透析を行えるところも

いずれも、病気の進行に応じた対症療法が中心になります。

5.尿毒症の予後と回復の見通し

尿毒症の予後は、その原因や進行度によって大きく異なります。

急性尿毒症の場合原因が明確で、早期に尿毒症の原因を除去できれば回復可能です。一方で、原因の除去が遅れた場合には、症状が急激に悪化し、生命を脅かすこともあります。

慢性腎臓病(CKD)の末期に伴う尿毒症の場合、原則として腎機能の回復は見込めず、透析や点滴などの継続的な治療が必要です。

骨がもろくなる?CKDが招く「骨ミネラル代謝異常」

慢性腎臓病(CKD)が進行すると「骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)」と呼ばれる合併症が起こることがあります。これは、腎機能の低下によって、リンやカルシウム、ビタミンD、副甲状腺ホルモン(PTH)などのバランスが崩れることで生じる、全身性の代謝異常です。

近年では、FGF23という骨細胞由来のホルモンが注目されています。これは、腎臓からのリン排出を促す一方で、活性型ビタミンDの産生を抑えるという重要な働きを担っています。

CKDが悪化すると、FGF23やPTHが過剰に分泌されることで、以下のような異常が見られるようになります。

  • 骨がもろくなる・骨折しやすくなる
  • 骨の痛みや変形
  • 副甲状腺の異常な肥大(上皮小体過形成)

これらを放置すると、骨だけでなく、心血管系や内分泌系にも悪影響を及ぼす可能性があります。

ネコさんにおいても、リンの蓄積やビタミンDの不足が進行しやすく、リン制限食やビタミンD製剤の使用などが治療の柱になります。また、骨のもろさや骨折のリスクにも注意が必要です。

「一歩手前」の兆候に注意!ヒトのCKD「ハイリスク群」

慢性腎臓病 猫と飼い主

慢性腎臓病(CKD)は、腎機能が少しずつ低下していく病気ですが、ヒトの場合「まだステージには入っていないけれどリスクが高い」という“予備群”のような状態が存在します。これがCKDハイリスク群と呼ばれる人たちです。

ハイリスク群の段階で生活を見直すことで、CKDの進行や発症を防ぐことができる可能性があります。ここでは、ハイリスク群について詳しく見ていきましょう。

“CKDに進行しやすい人”の特徴

CKDのハイリスク群に該当するのは、以下のような特徴を持つ人です。

  • 高血圧や糖尿病がある
  • 尿石症の既往がある
  • メタボリックシンドロームと診断された

など、いずれも腎臓に慢性的な負担がかかりやすい状態です。

一見、健康診断の数値が正常であっても、腎機能が目に見えないかたちで低下していることがあります。これらの条件に当てはまる方は、CKDへと進行するリスクが高いため、早めの生活習慣の見直しや定期的なチェックが欠かせません。

生活習慣病がCKDの引き金に

CKDの背景には、生活習慣病の存在があります。とくに高血圧や糖尿病、脂質異常症といった慢性疾患は、腎臓の血管やろ過機能に負担をかけ、知らず知らずのうちに腎機能をむしばんでいきます

たとえば、糖尿病では腎臓の毛細血管が障害を受け、「糖尿病性腎症」へと進行するケースが多く見られます。その早期指標となるのが、「微量アルブミン尿※」という状態です。健康診断でこの項目が指摘されたら、CKDのリスクがすでに始まっている可能性があると考えなくてはなりません。

※微量アルブミン尿とは:通常では尿に出ないはずのタンパク質(アルブミン)が微量に出てしまっている状態で、腎臓の初期障害を示します。

リスクを下げるには?まずは生活習慣の見直しを

ハイリスク群に該当する人がCKDを予防するには、何よりも生活習慣の改善が基本です。

  • 食塩の摂取を控える(目安は1日6g未満)
  • 肥満を解消する(LDL-コレステロールは120mg/dL未満が目標)
  • 禁煙する
  • 病態に応じたタンパク質制限を考慮する
  • 過労を避け、規則正しい生活を送る
  • 感染症予防に努める
  • 水分補給を心がける
  • 定期的な血圧・血糖・尿検査を受ける

また、早期の段階でかかりつけ医に相談し、腎臓の専門医へ紹介してもらうことも、進行を防ぐために非常に有効です。

「まだ症状が出ていないから大丈夫」と安心せず、ハイリスク群に当てはまる方は、今すぐ生活を見直すことが、10年後、20年後の腎臓を守る第一歩になります。

ネコと一緒に“腎臓をいたわる暮らし”をはじめよう

ネコさんの慢性腎臓病(CKD)は、加齢とともに発症リスクが高まる病気です。一方で、ヒトもまた、生活習慣や加齢により腎機能が徐々に低下していきます。
つまり、ネコもヒトも、腎臓の健康には日々のケアが欠かせないという点で共通しています。

ここでは、ネコさんと飼い主さんの両方が腎臓をいたわる暮らしを始めるために、すぐに実践できるケアのポイントをご紹介します。

ネコの腎臓を守るために、今できること

ネコさんの腎臓をいたわるには、日常生活の中での小さな配慮がとても大切です。

水分をしっかりとらせる

ネコさんは本来、水をあまり飲まない動物ですが、腎臓に負担をかけないためには水分摂取が重要です。

  • いつでも新鮮な水を用意する
  • 複数の場所に水飲み場を設置する
  • ウェットフードを取り入れる

食事療法を取り入れる

CKDと診断されたネコさんには、タンパク質やリン、ナトリウムの含有量を調整した療法食が推奨されます。獣医師の指導のもと、状態に応じて食事の見直しを行いましょう。

定期的な健康チェックを習慣に

腎臓病は早期発見が肝心です。
できれば年1回以上の定期健診を習慣にし、変化に早く気づける仕組みをつくっておくことが大切です。

佐藤れえ子先生佐藤れえ子先生

ネコさんのCKDは、尿中のミネラルが結晶化したり、結石(尿石症)が原因となって発症するケースが多くあります。CKD予防の観点からも、水分をしっかりとらせ、栄養バランスの整った食事を続けることが重要です。

飼い主自身も“腎臓にやさしい暮らし”を意識しよう

ネコさんの健康を守るためには、まずは飼い主自身が健康であることが何よりの土台となります。とくに腎臓は“沈黙の臓器”と言われるように、自覚症状が出にくく気づきにくい臓器です。以下のような習慣を意識してみましょう。

減塩を心がける

塩分の摂りすぎは高血圧を引き起こし、腎臓への負担を増やします。

  • 加工食品を控える
  • 食事は「薄味」を意識
  • 出汁や香味野菜を活用する

上記のような食事の工夫で、減塩を心がけましょう。

脱水を防ぐ

水分が不足すると、尿の濃度が高くなり、尿中に含まれるミネラルなどが結晶化しやすくなります。これはネコさんだけでなく、ヒトにも起こる現象で、尿が濃い状態が続くと結晶尿や尿路結石の原因になることがあります

とくに夏場の脱水や、忙しさのあまり水分補給を後回しにしてしまうといった状況には注意が必要です。

また、ヒトによっては体質による代謝異常や遺伝的な傾向によって結晶化のリスクが高まることもあります。

体質を変えることは難しいですが、「常に薄い尿を出す」=「こまめな水分摂取」を意識することで、予防につながります。

メタボ予防は腎臓病予防にもつながる

内臓脂肪が蓄積すると、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病のリスクが上がり、結果的にCKDの発症リスクも上昇します。

バランスの良い食事と適度な運動を心がけましょう。

検査習慣を身につける

年齢とともにeGFR(推算糸球体ろ過量)は低下しますが、健康診断で腎機能の推移を確認することで、早期発見につながります。

年1回以上の健康診断を習慣にし、異常があればすぐにかかりつけ医に相談する意識も大切です。

まとめ|腎臓を守ることは、ネコと自分の未来を守ること

猫の腎臓を守る

腎臓は、ネコさんにとってもヒトにとっても、静かに、しかし確実にその機能が失われていく“沈黙の臓器”です。
慢性腎臓病(CKD)は一度発症すると完全に治すことが難しく、だからこそ「早期発見・早期対応」が何より大切です。

ネコさんの体調管理を気にかけるように、飼い主である私たち自身の体にも、同じように目を向けてみましょう。

日々の食生活、水分補給、定期的な検査――。
どれも特別なことではなく、「ちょっとした気づかい」から始められることばかりです。

これを機に、ネコさんを大切に思う気持ちを、自分自身の健康意識へとつなげていきませんか?