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ネコさんにアロマってよくないの?


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ネコさんがいるとアロマは使ちゃだめなの?


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アロマのどんな成分がネコさんに危険なの?

ネコさんにとってアロマが危険だということをご存知でしょうか?

人間にとっては癒やしにもなるアロマですが、ネコさんにとっては命にかかわる毒かもしれないのです。

今回は、なぜアロマが危険なのか、どんなふうに危険なのかを踏まえて、ネコさんとアロマの危険性について解説します。

そもそもアロマってなに?どんなふうに使うもの?

アロマの小瓶

アロマオイルは天然香料、エッセンシャルオイル、化学合成された香料をフェノールやアルコール、植物油などで希釈したものです。自然な状態の花や葉の成分が100~1000倍に凝縮されています。

ヨーロッパでは病気やケガの治療にアロマセラピーが取り入れられていますし、日本でもリラクゼーションなどの目的で利用されています。肌に直接精油やアロマオイルを塗る、加湿器やディフューザーで空気中に拡散させるといった使い方が一般的です。

また、洗濯用の洗剤や柔軟剤、スキンケア用品などのほか、猫用のシャンプーやノミ対策、虫よけグッズにも精油やアロマを使っているものは少なくありません。

猫にアロマは危険と言われてるけど、なにが良くない?

口を開けた猫

私たちにとっては身近な存在であるアロマですが、実はネコさんにとってはとても危険なものだと言われています。一体アロマのどういったところがネコさんにとってよくないのでしょうか?

危険だと言われている成分と実際にあった事例をご紹介します。

猫に良くないとされる種類、成分など

エッセンシャルオイル(精油)を構成している成分のうち、フェノール類やケトン類、リモネン、ピネンの4種類はとくに毒性が高いとされています。

これらを多く含む植物でよく知られているものは以下です。

  • フェノール類:タイム、シナモン、クローブ、オレガノ、バジルなど
  • ケトン類:ミント、ローズマリー、セージ、スペアミントなど
  • リモネン:レモン、オレンジなどの柑橘類
  • ピネン:ユーカリなど

フェノールは溶剤としても使われますが、哺乳類全般に毒性があります。同じく溶剤として使われるアルコール類はネコさんには分解する能力がないため、非常に危険です。

ネコさんがアロマオイルを体内に取り込む経路としては以下の3つが考えられます。

  • 舐める
  • 吸い込む
  • 皮膚から吸収

ネコさんがアロマオイル自体を舐めたり、アロマオイルを塗った飼い主さんの肌を舐めたりすることで体内に取り込みます。また、アロマオイルが付着した手で撫でるとネコさんの被毛に移ってしまい、それを毛づくろいの際に舐めて摂取する可能性もあるのです。

ディフューザーや加湿器を使った場合は、空気中に成分が拡散されます。その空気を呼吸することで拡散されたアロマオイルの粒子が鼻の粘膜や肺から吸収されることになります。

また、ネコさんの皮膚は人間やイヌさんと比べて薄いため、肌に滴下したりすると容易に体内に吸収されてしまいます。精油を皮膚に塗った5分後に血液から検出できたというデータもあるそうです。

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皮膚の厚さは、ヒト1.5-4mm、イヌ1.15-2.4mm、ネコ0.4-2mmとされています。ネコさんの皮膚がとっても薄いことが分かりますね

アロマが原因で起きたと考えられる事例

アロマと猫

1990年代のはじめごろに、ティートゥリー(オーストラリア原産のフトモモ科の常緑植物)から抽出された成分を配合したシャンプーやノミよけグッズを使ったところ、ネコさんが体調を崩したという事例が相次いで報告されました。このことから、皮膚から吸収されたティートゥリーの成分が中毒を引き起こしているのではないかと考えたのでした。

ほかにも、複数のネット記事で獣医師などが以下のような事例を紹介しています。

  • ネコさんがアロマテラピーに使う精油を舐めたところ死亡した
  • 毎日アロマをたいていたら検査でネコさんの肝臓の数値が悪くなった(アロマをやめてしばらくしたら肝臓の数値が回復した)
  • ティートゥリーやペパーミントで肝障害が起きた

今のところ、原因ははっきりしていません。ひとつの可能性としては、ネコさんが「グルクロン酸抱合」と呼ばれる肝臓の機能を持たないことがあげられています。

「グルクロン酸抱合」は重要な解毒機構のひとつですが、肉食のネコさんには植物由来の毒素を分解する必要がないために機能が退化したと考えられています。

そのため、人間なら分解して無害化できる精油の成分が、解毒できないのが原因と言われています。

また、ほかの哺乳類では、精油に由来する成分は肝臓の「グルクロン酸転移酵素」によって代謝され、体外に排出されます。ですが、ネコさんはこの酵素が十分に生成されないため、中毒が発生する可能性があるのです。

ほかの哺乳類には無害な芳香分子の「モノテルペン炭化水素類」に、ネコさんは過剰に反応するという話もあります。

猫がアロマを摂取するとどんな症状が出る?

黒猫とアロマの小瓶

ネコさんにとってアロマは大変危険だと言われています。ネコさんがアロマを摂取してしまった場合、どのような症状が出るのでしょうか?また、中〜長期的な危険性はあるのでしょうか?

アロマを摂取するとあらわれる急性症状

急性の中毒症状としては次のような症状が見られます。

中毒症状
  • 涎を流す
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 元気消失
  • 食欲低下
  • 神経症状
  • 運動失調
  • 筋肉の震え
  • 抑うつ状態
  • 異常行動
  • めまい
  • 失禁
  • 活力喪失

もし、ネコさんにとっての危険性を知らずに使用し、上記のようなような症状が見られた場合は、かならず獣医師に相談するようにしましょう。

中〜長期的影響も懸念される

アロマはネコさんの体内で代謝・排出できずに体内に蓄積される可能性が指摘されています。そのため、何年も経ってから症状が出ることもあるのです。ただし、現時点では明確な根拠はありません。ただし、現時点では明確な根拠はありません。

とは言え、ティートゥリーのように中毒性が確実にあると確認される例が新たに発見されるかもしれないのですから、油断はできません。

とくに、代謝障害や神経障害を持つネコさん、肝臓の機能が未発達な子猫には影響が大きいかもしれないと心配している獣医師もいます。

治療は対症療法のみだが、軽症ならすぐに回復する

診察中の猫

嘔吐や下痢で脱水症状を起こしている場合は、おもに点滴での治療をおこないます。また、食欲低下は、脱水や下痢、吐き気が落ち着けば大抵回復します。

多くのネコさんは、皮膚の洗浄や点滴、下剤の投与などで2〜3日で回復するようです。

まだ結論は出ていないけれど、避けたほうが安心

ネコさんとアロマに関する研究データとして信頼できるものはまだ存在していません。長期的な影響を調べた研究もデータもありません。そのため、現状ではアロマが有害だと決めつける確証がないのが現実です。

獣医師の中でも、危ないのはティートゥリーだけで、ほかは気にする必要はないと言う人もいます。直接舐めたりしなければ大丈夫、少量ならあるいは薄めれば問題ないと考える人もいるようです。

しかし、絶対に安全だと証明された精油・アロマオイルもまた存在しないと言われています。

「短期的には害はなくても体内に蓄積する可能性がある。だから、室内の空気中に成分を拡散させる芳香浴だけでも中〜長期的な影響がないとはかぎらない。」と心配する獣医師もいます。

以上を踏まえた結論としては、「ネコさんにとって害があるかもしれないものにあえて手を出す必要はない」しかありません。

大抵の人にとってアロマは生活していく上で必要不可欠なものではありません。ネコさんのいる家の中には持ち込まない、ネコさんを近づかせない、というのがいちばん確実な対策になるでしょう。

最後になりましたが、アロマの危険性については、こちらの記事でも紹介しています。とてもわかりやすいので、ぜひご覧ください。

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