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ネコさんの腎臓病ってどんな病気なんだろう?

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もし腎臓病になったら治すことはできるの?

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腎臓病と診断された。これからどうすれば……。

ネコさんは他の動物に比べて腎臓の病気にかかる可能性が高いことで知られています。

飼い主さんはネコさんの腎臓病について理解を深め、病気と向き合っていく心構えが大切です。

今回はネコさんに多い病気「慢性腎臓病」について、病気の原因や症状、治療法などを詳しく解説します。

動物いのちの会いわて代表の下机都美子さんにもお話を伺い、コメントをいただきましたので、少しでも参考になれば幸いです。

下机都美子さん
岩手県雫石町を拠点に、犬や猫の保護・譲渡活動、地域猫活動などを行う「動物いのちの会いわて」(2000年発足)代表。腎臓病を患ったネコさんとの暮らしも多数経験しています。

こんな人におすすめ

  • ネコさんの腎臓病について詳しく知りたい
  • 腎臓病の診断方法や治療法を知りたい
  • ネコさんが腎臓病になったらどうすればいいのか知りたい
  • 猫の腎臓病(腎不全)とは

    ネコさんにとって腎臓病は一般的な疾患のひとつです。ネコさんの死亡原因の中ではもっとも多く(※)、約3匹に1匹が腎臓病を発症するとも言われています。

    特に慢性腎臓病(慢性腎不全)は、高齢ネコさんに多い病気とされていますが、若いネコさんでも発症する可能性があるため注意が必要です。

    (※参考:アニコムどうぶつ白書2023|2-4-10 猫の年齢別の死亡原因

    腎臓のつくり

    ネコさんは腎臓1つあたりおよそ20万個のネフロンを持っています。人間と同じく、ネコさんも腎臓を2つ持っているので、2つ合わせて約40万個のネフロンが存在します。

    ネフロンは、糸球体とボウマン嚢からなる腎小体と、腎小体から続く一連の尿細管から構成されています。

    腎臓の主なはたらき

    腎臓の主な機能は、以下の通りです。

    1.老廃物を除去する
    腎臓は血液をろ過し、不要な代謝物や毒素(主に尿素やクレアチニンなど)を尿として体外に排出する役割を持ちます。
    2.水分量を調整する
    体内の水分量と電解質(ナトリウム、カリウム、塩素など)のバランスを維持し、体液の恒常性を保ちます。
    3.血圧を調整する
    血圧が低下すると腎臓は「レニン」という物質を分泌し、「アンジオテンシンⅡ」に作用して血管を収縮させます。
    逆に、血圧が上昇するとレニンの分泌を抑え、血圧を調整します。
    4.赤血球の産生を促す
    腎臓は「エリスロポエチン」というホルモンを分泌し、赤血球の生成を促します。腎機能の低下によりエリスロポエチンが不足すると、貧血の原因になります。

    腎臓の中で主に重要な役割を持つのは「糸球体」「尿細管」です。

    糸球体では血液中の老廃物をろ過して、おしっこのもと(原尿)を排出し、尿細管へと送り出されます。

    原尿の中には老廃物のほか、アミノ酸やブドウ糖などの栄養素や、ナトリウムやカリウムといったさまざまなミネラルが含まれています。そのため、すべてをおしっことして排出してしまうと体内のバランスが乱れてしまうのです。

    そこで、栄養素やミネラルなどの必要な物質を腎臓に再吸収するという役割を担っているのが尿細管です。

    しかし腎臓病が進行するとネフロンが徐々に機能を失い、修復不能なダメージを受けることがあります。
    初期の段階では、残っている健康なネフロンが機能を補ってくれるため症状が現れにくいですが、腎臓病が進行するにつれて限界に達し、さまざまな症状が現れ始めます。

    病気を慢性化させないためにも、いかに早期発見できるかが非常に大切です。

    猫の腎臓病の原因

    腎臓病は「急性腎臓病」「慢性腎臓病」の2つに分けられ、それぞれ原因や症状、治療法も異なります。

    急性腎臓病の原因

    急性腎臓病は、ユリ、薬、たばこなど、ネコさんにとって中毒性の高いものの誤飲が主な原因です。

    中毒性の高い物質は腎臓に直接的なダメージを与えてしまうため、誤って摂取すると急速に腎機能が低下し、「急に元気がなくなる」「嘔吐や下痢をする」といった症状が現れます。

    他にも尿道閉塞などの泌尿器疾患や、感染症などが原因で急性腎臓病を発症することもあります。症状が見られたらすぐに病院を受診し、治療を受けることが大切です。

    急性腎臓病の場合、基本的に入院治療が必要になりますが、初期の段階で適切な治療を行えば回復が見込めると言われています。

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    慢性腎臓病の原因

    慢性腎臓病は、時間をかけて少しずつ腎臓がダメージを受けることで発症します。

    「尿細管間質性腎炎」「多発性嚢胞腎」などはよく見られる原因のひとつですが、他にもさまざまな原因が考えられます。

    しかし、個体ごとに慢性腎臓病の原因を特定するのは難しいと言われています。病気が進行してから発見されるケースが多く、初期段階での原因の特定が遅れるためです。

    尿路結石や細菌感染といった病気が原因となる場合や、食事内容、脱水などが腎臓に負担を与えることもあります。

    新鮮な水をいつでも飲めるようにするなど、ネコさんのために飼い主さんができることは欠かさず行うことをおすすめします。

    下机さん下机さん

    ネコさんの慢性腎臓病は7歳を過ぎたら多くなると言われていますが、ストレスが原因で腎臓に負担がかかることもあると思うので、年齢はあまり関係ないと考えています。

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    今回の記事では、主に慢性腎臓病について解説しています。

    猫の慢性腎臓病の診断方法

    ネコさんの慢性腎臓病を診断するための検査は、主に尿検査血液検査画像検査の3種類があります。

    国際獣医腎臓病研究グループ・IRIS(アイリス)では、軽度の腎臓病を診断する場合とより進行した腎臓病を診断する場合、それぞれの診断方法を紹介しています。

    引用:IRIS 犬猫の慢性腎臓病の診断、ステージングおよび治療より

    ステージ1およびステージ2前期の診断

    軽度の腎臓病(ステージ1~ステージ2前期)は、以下の検査結果から1つ以上の異常が見られた場合に診断されます。

    1.血液検査
    主にクレアチニンとSDMAの数値の上昇を見ます。
    持続的にSDMAの上昇が認められた場合、軽度の腎臓病(CKD)と診断されます。
    (※SDMA:14μg/dL以上)
    2.画像検査
    X線検査やエコー検査などを用いて、画像上で腎臓に異常がないかを確認します。
    3.尿検査
    尿中蛋白クレアチニン比(UPC)が0.4以上の場合、タンパク尿が出ていると考えられます。

    一度の検査では腎性のものか判断ができないため、IRISでは2週間以上の間隔で3回以上の検査を推奨しています。

    ステージ2後期~ステージ4の診断

    以下の2つの検査結果は、より進行した腎臓病(ステージ2後期~ステージ4)の診断に使用します。

    1.血液検査
    腎機能が低下すると、BUN(尿中窒素)、Cre(クレアチニン)、SDMAなどの数値が高くなります。中でもSDMAは、腎機能の低下にいち早く気付くことができる数値です。
    IRISではクレアチニンとSDMAの数値を診断に用いることを推奨しています。
    ※SDMAの正常値:14μg/dL未満、クレアチニンの正常値:1.6mg/dL未満
    2.尿検査
    尿検査では、主に尿比重(USG)の値をもとに診断されます。
    ネコさんの尿比重の正常値は1.035以上とされており、正常値を下回ると腎臓病の可能性が高いことが言えます。
    その他、尿タンパクや尿潜血、尿の色や濁りからも診断の手がかりが得られます。

    下机さん下机さん

    腎臓病とわかるきっかけはさまざまです。たいていは食欲が低下したり、元気がなくなったり、お水をたくさん飲むようになったりするところから腎臓病を疑って病院に行くことが多いです。

    ステージ別|猫の慢性腎臓病の症状

    IRISでは、慢性腎臓病をステージ1~4の4つに分類し、ステージ別の症状について以下のように定義しています。

    引用:IRIS 犬猫の慢性腎臓病の診断、ステージングおよび治療より

    ※空腹時のクレアチニン/SDMAの数値に基づいてステージ分類をします。

    ステージクレアチニン(mg/dL)SDMA(μg/dL)症状
    Stage1<1.6(クレアチニンは正常範囲内)<18初期は無症状のことが多い。X線検査にて腎臓の異常を発見、触診における腎臓の異常、持続的なタンパク尿やSDMAの上昇などが見られる。
    Stage21.6~2.818~25ステージ2の前期はステージ1と同じくほぼ無症状。ステージ2の後期になると、多飲多尿など軽度の症状が見られることがある。
    Stage32.9~5.026~38多飲多尿のほか、食欲不振、嘔吐など様々な症状が見られる。尿毒症を発症し始めるのもこの頃。
    Stage4>5.0>38腎機能の低下によって尿毒症が進行すると、尿がほぼ出ない(無尿)、食欲不振、激しい嘔吐、痙攣など重篤な症状が見られる。
    IRIS 犬猫の慢性腎臓病の診断、ステージングおよび治療をもとに編集部作成

    ネコさんと暮らすなかで、「ネコさんの腎機能が低下している」と判断するのは容易ではありません。

    症状が見られ、動物病院を受診する頃にはステージが進行している状態であることが多いのが、ネコさんの慢性腎臓病の怖いところです。

    下机さん下机さん

    最低でも年に1回、定期的に健康診断を受けることをおすすめします。腎臓病以外の病気に気付ける可能性もあるわけですから。

    毎年のワクチン接種と一緒に検査できるのが理想的ではないでしょうか。

    もし愛猫が慢性腎臓病と診断されたら

    検査の結果、ネコさんが慢性腎臓病と診断された場合、今のところ完治を目指すための治療を受けることはできません。主に腎臓のはたらきを担うネフロンは、慢性的にダメージを受け続けてしまうと修復が不可能だからです。

    慢性腎臓病の治療は病気の進行を遅らせ、症状を緩和することを目的としています。

    ネコさんと飼い主さん双方にとって、負担なく続けられる治療法を獣医師さんと相談して決めていくことが大切です。

    猫の慢性腎臓病の治療方法

    慢性腎臓病の主な治療法は3つあります。

  • 食事療法
  • 皮下点滴
  • 投薬
  • それぞれ解説します。

    食事療法

    食事療法は最も一般的に用いられる治療法です。

    IRISでは、ステージ2のネコさんには腎臓食を考慮することを提案し、ステージ3および4のネコさんには腎臓食を与えることを推奨しています。

    療法食の目標は、以下の4つです。

    1.尿毒症の兆候を含む、CKDの臨床結果を改善または予防する。
    2.CKDの進行を遅らせ、生存期間の延長をはかる。
    3.電解質、カルシウムとリン、酸塩基バランスの乱れを最小限に抑える。
    4.適切な栄養を維持する。

    療法食はネコさんにとって美味しいものとは言えないようです。

    そのため、療法食への移行がスムーズにいかないことが多いでしょう。

    ネコさんが療法食を拒むことを考慮し、IRISでは少なくとも3週間かけてゆっくりと移行することを推奨しています。

    療法食への移行例

    1週目:25% 療法食、75% 元々の食事
    2週目:50% 療法食、50% 元々の食事
    3週目:75% 療法食、25% 元々の食事
    4週目:100% 療法食

    参考:IRIS公式HP|慢性腎臓病(CKD)の猫の食事療法[2022年最新]

    皮下点滴

    腎臓病の治療において、もっとも欠かせないのが脱水症状の予防です。

    腎臓病のステージや脱水症状の有無によっても異なりますが、毎日の飲水だけでカバーできない場合には、点滴が推奨されます。

    点滴の頻度や1回あたりの量については、ネコさんの脱水状態や病気の進行度など、さまざまな条件を考慮したうえで獣医師が決定します。

    「腎臓病と診断されたら必ず週に〇回点滴をしないといけない」とか「皮下点滴をするなら1回〇ml」などと決まっているわけではなく、ネコさんの状態によって頻度や回数は異なります。

    投薬

    腎臓病を悪化させないために「高血圧症」「タンパク尿」「リン摂取の制限」に気を付ける必要があり、薬を使用する場合があります。

    代表的な薬は以下の通りです。

    【高血圧症・タンパク尿の薬】

    慢性腎臓病における尿タンパクの漏出抑制と、全身性高血圧症の治療薬です。

    代表的な薬

    ・アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害薬):ベナゼプリル(製品名:フォルテコール)
    ・アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB):テルミサルタン(錠剤)、セミントラ(液状、有効成分はテルミサルタン)

    フォルテコールはフレーバーが付いており、通常の錠剤よりも与えやすいのが特徴です。

    テルミサルタンは錠剤ですが、もう一つ2022年より「セミントラ」という液状の薬が流通しています。無味無臭で食事にも混ぜやすいセミントラは、ネコさんにも飼い主さんにも負担が少なく与えやすいのが特徴です。

    高血圧症とタンパク尿の治療には、ACE阻害薬またはARBのどちらか一方が用いられます。(併用はしません)

    【リン吸着剤】

    食事によるリン摂取の制限をしても、血液中のリン濃度が下がらない場合にリン吸着剤を使用することがあります。

    リン吸着剤には、アルミニウム製剤、カルシウム製剤、塩酸セベラマーなど、さまざまな種類が挙げられます。

    代表的な薬

    ・カリナールコンボ
    ・プロネフラ
    ・イパキチン
    ・キドキュア  など

    この他、腎臓病の進行を遅らせると言われている「ラプロス」という薬もあります。

    最近ではAIM薬の開発にも注目が集まっていますね。今後の医療の進歩に期待が高まります。

    ペット用のお薬はネット通販で購入できることもありますが、飼い主さんの自己判断で投薬を行うのは大変危険です。必ず担当の獣医師さんと相談のもと、投薬すべきか否かの判断を行いましょう。

    下机さん下机さん

    ネコさんの腎臓病のごはんは美味しくないですし、お薬も好んで飲むコはいません。点滴もひと苦労です。それでも医療は進化し、飼い主さんができるケアも多様化してきてはいます。

    しかし、本来はネコさんを慢性腎臓病にさせないためのケアが、もっと前からできるのが理想だと考えています。

    猫の慢性腎臓病の治療にかかる費用

    ネコさんの慢性腎臓病の治療にかかる費用はさまざまです。治療内容、ステージ、通院の頻度といった条件によって大きく異なります。

    また動物病院によっても料金が変わるため、一概には言えません。

    しかし参考までにアニコムどうぶつ白書2023のデータを見ると、猫の慢性腎臓病における年間治療費の平均値は82,306円(※)となっています。

    (※引用:アニコムどうぶつ白書2023「犬と猫の診療費と診療内容」より)

    最近では通院の負担を少しでも軽減するため、自宅点滴を選択する飼い主さんも増えています。

    自宅点滴はネコさんの状態や性格、飼い主さんの状況や家庭環境などさまざまな観点から獣医師さんが総合的に判断したうえで可能となります。

    すべてのネコさんに自宅点滴が推奨されるわけではないことは理解しておきましょう。

    猫の慢性腎臓病を予防するには

    ネコさんの慢性腎臓病を予防するためには、毎日の水分摂取が効果的です。

    1日に飲むべき水の量を把握したうえで、ネコさんがいつでも新鮮なお水を飲めるようにお部屋の環境を整えてあげましょう。

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    ネコさんが1日に必要な水の量はどれくらい?計算方法や水の飲ませ方はこちらの記事をチェック!→猫が1日に必要な水の量

    また普段の食事内容にも注意が必要です。例えばリンやタンパク質の過剰摂取は腎臓に負担をかけてしまいます。

    栄養バランスのとれた食事を適量与えることも大切です。

    慢性腎臓病は早期発見が大切な病気なので、定期的な健康診断も欠かせません。

    少なくとも年に1回は、検査を受けましょう。

    下机さん下机さん

    一般的に7歳以上の高齢ネコさんになったら年に1回の健康診断を推奨されていますが、7歳という年齢にこだわることはないと考えています。

    慢性病になる前に早期発見できれば、飼い主さんが愛猫のためにできることも増えるのではないでしょうか。

    まとめ

    慢性腎臓病は、長い間腎臓に負担がかかることで、見えないところで少しずつ進行していく病気です。

    ネコさんの慢性腎臓病は早期発見が何より大切です。

    症状が出てくる頃にはステージ3~4と病気が進行しているケースが多くあります。

    ネコさんの年齢を問わず、年に1回の健康診断で病気を早期発見でき、早めの治療ができるでしょう。

    またネコさんを慢性腎臓病にしないために、普段の生活では食事内容や飲水量にも気を配りましょう。