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ネコさんが食べると危険なものにはどんなものがあるの?


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もしかしたら、おもちゃを食べたかも。はっきりしないときはどうしたらいい?


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誤飲・誤食のときってどんな治療をするのかしら?

ちょっと目を離した隙におもちゃを食べてしまった。そんな経験をしたことのある飼い主さんも多いのではないでしょうか?

誤飲・誤食は飼い主さんが注意することで防ぐことのできる事故です。

今回は、ネコさんが誤飲・誤食をすると危険なもの、異物を食べてしまったときの症状や対応、治療法についてご紹介します。

 飼い主が思う以上に猫は誤飲・誤食が多い

毛糸で遊ぶ子猫

肉食のネコさんは雑食のイヌさんと比べて誤飲・誤食は少ないといわれています。とはいえ、まったくないわけではありません。ネコさんの手術では誤飲・誤食が原因のものが意外と多いのです。

「アニコム 家庭どうぶつ白書2019」によれば、ネコさんの手術、入院の理由ともに2位が消化管内の異物と誤飲です。

誤飲・誤食は、大人のネコさんよりも子猫や若いネコさんに多いといわれています。若いネコさんは、警戒心よりも好奇心が勝ってしまい、遊んでいるうちに飲み込んでしまうことが多いようです。ネコさんの植物による中毒の半分は1歳以下の子猫だという報告もあります。

また、女の子よりも男の子のほうが誤飲・誤植が多い傾向にあります。男の子は女の子と比べて、行動範囲が広く好奇心旺盛で噛む力が強いため誤飲・誤食をしやすいと考えられているようです。

その誤飲・誤食、実は病気かもしれない

猫用おもちゃ

食べもの以外のものを何でも食べてしまうので困っている。そんなネコさんは実は「異食症」かもしれません。

異食症とは、間違って食べてしまう誤飲・誤食とは異なり、ネコさんが自ら進んで食べもの以外のもの(栄養にならないもの)を食べてしまう病気です。

  • 紐状のもの
  • ビニール製のもの
  • 布や毛布など
  • ティッシュや段ボールなどの紙
  • 猫砂
  • おもちゃ
  • スポンジ
  • 石けん(アロマ系の成分に注意)

異食症のネコさんは、特定のものを食べようとする傾向があります。なにに執着するかはネコさんによって異なりますが、一例をご紹介すると以下のものを食べることが多いといわれています。

    毛布や布などの繊維を食べてしまう行為は「ウールサッキング」といわれています。紐状のものやビニール、おもちゃには腸閉塞の原因になることも多く、注意が必要です。

    異食症の原因ははっきりとは解明されていませんが、内部寄生虫や栄養障害、適切な離乳ができなかった、ストレスなどの精神的な要因が関係していると考えられています。

    愛猫が何でも食べて困っているという飼い主さんは、獣医師に相談することをおすすめします。

    猫が誤飲・誤食しやすいもの

    ネコさんの誤飲・誤食では、思いもよらないものを食べてしまうことがあります。うんちといっしょに排泄されることも多いのですが、ものによっては、腸閉塞を起こしたり、中毒を起こしたりとネコさんの命に関わる危険なものもあります。

    今回は、その中でもとくに危険なもの、誤飲・誤食の頻度が高いものをまとめました。

    猫用品

    ネコさんの誤飲・誤食で意外と多いのが猫用品です。「専用のものだから安全だ」と思いがちですが、そうとも言い切れないことを知っておきましょう。

    おもちゃ

    ネコさんにとって遊びは狩りです。肉食動物であるネコさんは、獲物を捕まえたあとに食べます。これは本能による行動なので、おうちで暮らしているネコさんも同じような行動をすることがあります。

    とくに、ウサギなどの獣毛、鳥の羽や手ごろな獲物サイズのネズミのおもちゃも本能を刺激しやすく誤飲・誤食に繋がりやすいため注意が必要です。

    ネズミのおもちゃの中には、ネコさんの誤飲・誤食事故が頻発しており、多くの獣医師が危険性を指摘している商品もあります。

    ほかにも、紐状のおもちゃ、釣りざお型の猫じゃらしの紐も注意が必要です。紐状のものについては、後述しますので詳しくはそちらをご覧ください。

    ねこずきけりけりと猫

    誤飲・誤食の癖があるネコさんには、紐や獣毛を使っていない、ある程度の大きさがある「ねこずきけりけり」「ねこずきころころ ファブリック」や「ねこずきねずみ」などのシンプルなおもちゃがおすすめです。

    猫砂

    ネコさんの中には、猫砂を食べてしまう子もいます。食べてしまう原因としては以下のようなことが考えられます。

    • 栄養不足
    • ストレス
    • 悪性腫瘍
    • 寄生虫の感染

    とくに、おからの猫砂は食べもののにおいがするせいか、食べてしまうネコさんもいます。おからは植物ですので、少しくらい食べても問題はないと思われます。ただし、防カビ剤や防腐剤が添加されている商品もあるので気になるという声も少なからずあります。

    また、紙の猫砂は水分を吸って膨らむため詰まりやすいので注意が必要です。

    小さな村の猫砂と猫

    猫砂を食べてしまうネコさんには、「小さな村の猫砂」のような、木製で固まらないタイプの猫砂はいかがでしょうか?

    爪とぎのカス

    爪を研いだときに出るカスを食べてしまうネコさんもいます。研ぎカスであれば、大体は細かいので、数日中にはうんちといっしょに出るのがほとんどです。

    気をつけたいのは、研ぎカスを食べているうちに、爪とぎを噛みちぎって食べるようになることです。大きな破片を食べると、お腹の中で詰まってしまう可能性があるので注意しましょう。

    がりがりボードと猫

    研ぎかすを食べてしまうネコさんには、段ボール製でもカスの出にくい「がりがりボード」のハードタイプや壁まもる君の「麻タイプ」、「帆布タイプ」がおすすめです。

    中毒症状を起こすもの

    ネコさんの誤飲・誤食には、中毒を起こす危険なものもたくさんあります。

    中毒により腎臓や肝臓などの内臓に障害を覆うことも多く、助かっても長期にわたって治療が必要なケースもあります。

    食べもの

    人間にとってはありふれた食べものが、ネコさんにとっては命をおびやかす危険な食べものであることも少なくありません。

    とくに注意したいのが以下の食べものです。

    • 玉ねぎ、ニラ、ニンニクなどのねぎ類
    • チョコレート
    • カフェイン入りの飲料
    • アルコール類
    • バラ科の果物の種や未熟な果実(うめ、もも、さくらんぼなど)

    この中でも、とくに注意してほしいのが玉ねぎをはじめとするねぎ類です。ねぎ類には、玉ねぎのほかにニラ、ニンニク、長ねぎなど私たちの食卓にはかかせない食材が多いのです。

    ねぎ類にはネコさんの玉ねぎ中毒の原因になる「有機チオ硫酸化合物」という物質が含まれています。

    有機チオ硫酸化合物は加熱しても壊されず、煮汁などにも染み出します。また、一見するとねぎ類が入っているとは気づきにくい食べもの(ハンバーグやコロッケなど)も多いので注意が必要です。

     植物

    肉食動物のネコさんは、植物の毒素を上手に処理することができません。そのため、ネコさんにとって危険な植物は700種以上もあるといわれています。

    その中でも、とくに注意が必要なのはこちらです。

    • ユリ(ユリ科の植物全般)
    • チューリップ
    • サトイモ科の植物(スパティフィラム、カラー、モンステラなど)
    • ナス科の植物(トマト、ほうずきなど)
    • キンポウゲ科の植物(ラナンキュラス、クリスマスローズなど)
    • トウゴマ
    • イチイ
    • スズラン
    • ツツジ
    • ナンテン

    この中でも、ユリ科の植物は猛毒といわれています。とくに、オニユリ、テッポウユリ、カノコユリは毒性が強く注意が必要でしょう。

    ユリは、花、花弁、花粉、葉、茎、根などのすべての部位が危険です。ユリの花を生けている花瓶の水を飲んだだけでも重篤な中毒を引き起こす可能性があります。

    ネコさんと暮らしているなら、ユリ科の植物を室内に持ち込むのは避けましょう。

    人用の医薬品、サプリ

    人用の医薬品は動物に使われることもあります。しかし、人用の薬の中にはネコさんにとって大変危険なものもあるのです。

    • アセトアミノフェン
    • イブプロフェン
    • 抗うつ剤
    • 口径糖尿病薬
    • イソニアジド
    • 炎症鎮痛剤

    とくに、注意すべきなのは「アセトアミノフェン」と「イブプロフェン」が含まれている解熱鎮痛剤です。これらの薬は、ネコさんがたったひと粒摂取しただけで重篤な中毒症状を引き起こすこともあります。また、アセトアミノフェンは摂取後18〜36時間で死に至ることもあり、薬の中でもとくに注意が必要とされています。

    また、人用のサプリメントも危険です。有名なものでは「α-リポ酸」があります。美容やダイエット目的で使用されるサプリです。

    α-リポ酸は、ネコさんが好むにおいがするのか、積極的に食べてしまう傾向があります。気づいたときには大量に食べていたということもありえるので管理は厳重におこないましょう。

    身の回りのもの

    私たちが普段、何気なく使っているものが、実はネコさんにとって危険なものだったなんていうのは、わりとよくあることのように思います。

    今回はたくさんある危険なものの中から、ジョイントマット、ボタン・コイン電池、紐状のもの、小さくて丸いものについて解説していきます。

    ジョイントマット

    消音効果が高く、クッション性があり、滑りにくいことから小さなお子さんやペットのいるご家庭で使用されることも多いジョイントマット。人間には便利なアイテムですが、ネコさんにとっては大変危険なものでもあります。

    ジョイントマットのもっちりとした噛み心地を好むネコさんも多く、最近は誤飲・誤食が増えているそうです。

    また、ジョイントマットは適度な弾力があるせいで、ネコさんの腸に詰まりやすく、腸閉塞の原因になります。

    もし、ネコさんがマットを噛んでいるのであれば撤去することをおすすめします。

    ボタン、コイン型電池

    おもちゃや時計などに使われることの多いボタン電池やコイン電池ですが取り扱いには注意が必要です。

    ネコさんが誤って飲み込んでしまうと、短時間でも食道や胃などの消化器官を損傷したり、穴が開いたりすることがあります。場合によっては、命に関わる危険な状態になることもあるのです。

    もし、飲み込んでしまったら早急に動物病院を受診してください。

    電池式のおもちゃを与える際は、蓋が開かないようしっかりと閉める、ネコさんがいる場所では蓋を開けないなど安全管理を徹底しましょう。

    紐状のもの

    細長い紐状のものはネコさんにとって、最も危険な誤飲・誤食といえるでしょう。

    あるアンケートでは、ネコさんの誤飲・誤食で最も多いのが「紐」だったという報告があります。

    ネコさんは紐が好きな子が多く、ついつい遊ばせてしまいますが、なるべくなら、紐で遊ぶ癖はつけないようにしたいところです。

    紐状のものが危険だといわれるのは、腸で引っ掛かり組織を壊死させてしまったり、腸壁がやぶれてしまったりすることがあるからです。

    短ければうんちといっしょに出てくることも多いようですが、何センチまでなら安全だと言い切ることはできません。

    症状が出たら病院に行こうと考える飼い主さんも多いようですが、症状が出たときには手遅れの場合もあります。紐状のものを飲み込んだときは、すぐに動物病院を受診してください。

    もし、対応に迷ったときは自己判断はせず、かならず獣医師に相談して指示を仰ぎましょう。

     丸くて小さいもの

    ネコさんのいるご家庭では、鈴やビー玉、お金などの丸くて小さいものは、注意が必要です。とくに、1cm以上の大きさの球体は詰まりやすく腸閉塞の原因になります。

    よくあるのが、首輪に付いている鈴を飲み込んでしまうケースです。ネコさんの性格によっては、鈴はストレスの原因になるとも言われているので、なるべく鈴のついていない首輪を選ぶようにしましょう。

    こんな様子が見られたら誤飲・誤食を疑おう

    寝ている子猫

    ネコさんの誤飲・誤食の多くは、飼い主さんがちょっと目を離した隙に起きています。そのため、症状が出るまで気がつかなかった、もしかしたら食べてしまったかも?といった曖昧なケースが起こりがちです。

    そんなときにも慌てないために、誤飲・誤食で見られるおもな症状と誤食の可能性があるときの対処をご紹介します。

    誤飲・誤食で見られる症状

    誤飲・誤食のおもな症状には次のようなものがあります。

    • 嘔吐
    • 食欲不振
    • 元気消失
    • 呼吸がしづらそう、苦しそう

    喉に詰まっている場合は、呼吸ができなくなるため、息苦しそうな様子が見られます。さらに、口を閉じたり開けたりをくり返す、舌や歯茎が青紫色になる(チアノーゼ)といった症状があれば、誤飲・誤食の可能性を疑います。

    また、腸内に異物が詰まると1日に何度も嘔吐をくり返すようになります。多いと1日に10回以上も嘔吐することも。普段あまり吐くことのないネコさんが3回、4回と嘔吐をくり返す場合は、誤飲・誤食の可能性もあります。

    食べてしまったかも?と思ったら

    置いてあったものが消えた、噛みちぎったようなあとがある、上記のような症状がみられるといった場合は、誤飲・誤食の可能性が非常に高いです。食べているところを見ていなくても、念のため動物病院を受診しましょう。多頭飼いで誰が食べたかわからない場合は全員連れて受診します。

    また、誤飲・誤食が疑われるような場合は時間勝負でもあります。飲み込んでから2時間程度であれば、胃の中に異物が残っている可能性が高く、催吐処置(薬を使って吐かせる)をおこなうことができます。

    症状がないか様子を見るという飼い主さんも多いようですが、おすすめはしません。症状が出たときには、腸閉塞を起こしている可能性もあり、命にかかわることもあります。症状がないからと安易に判断せず、場合によっては救急で受診することも考えなければいけません。

    もし、受診したほうがいいのか悩んだら、自己判断せずにかならず獣医師に相談してください。

    病院ではこんな治療をする

    レントゲン画像と猫

    ネコさんの誤飲・誤食が疑われる場合はレントゲン検査、超音波エコー検査、バリウム検査で確認をします。異物が確認された場合の治療法は4つあります。

      1. 催吐処置
      2. 内視鏡による摘出
      3. 開腹手術
      4. うんちに出るのを待つ

       

      治療法1:催吐処置

      胃の中に異物が残っていて、吐かせても安全なものであれば催吐薬などで吐かせます。ただし、紐状のものや尖っているものなどは、吐き出す際に食道を傷付ける可能性があるため催吐処置はおこなえません。

       

      治療法2:内視鏡による摘出

      催吐処置で吐き出さない場合には、内視鏡を使って取り出すこともあります。開腹手術をおこなうよりも負担は少ないのですが、ネコさんの場合は、全身麻酔になります。また、催吐処置と同様に紐状のものや尖っているものは取り出すことができません。

       

      治療法3:開腹手術

      腸に詰まってしまった、紐状のもの、鋭利なものは開腹手術で取り出すことになります。ネコさんにとってはいちばん負担が大きく、飼い主さんにとっても費用面や精神面など大きな負担になります。

       

      治療法4:うんちに出るのを待つ

      異物が確認された場合でも、小さかったり、症状が出ていなかったりする場合は、うんちといっしょに排泄されるのを待つこともあります。問題なく排泄されれば、ネコさんにも飼い主さんにもいちばん負担の少ない方法です。

      ただし、自己判断は禁物です。様子を見ても良いかどうかは、ネコさんの体格や状態、異物のサイズ、形状などから総合的に判断する必要があります。獣医師の診断を受けるようにしてください。

      愛猫を誤飲・誤食から守るための対策

      ネコさんの誤飲・誤食は命にも関わる危険な事故です。異物を飲み込んでしまったときの対応を知ることも重要ですが、それ以上に誤飲・誤食をさせないことが大切です。

      ネコさんが飲み込んでしまう危険性のあるものはすべて、棚やカゴなどにしまう。ゴミ箱は蓋つきのものにするなど、とにかくネコさんが触れないようにすることです。

      とくに、ネコさんのおもちゃは飼い主さんが見ていられないときには隠すようにしましょう。

      もし、ネコさんが棚の引き出しを開けてお困りの場合は、人間の赤ちゃん用の引き出しのロックを使うのがおすすめです。

      ネコさんの誤飲・誤食はちょっとした注意でリスクを減らすことができます。油断せずにしっかりと対策をしましょう。